来るべきアレフバー の世界

イラン×文学×図書館=

なんちゃってムスリム食生活体験の顛末

さて、13日にラマダーンも明けて、ほっとした週末を過ごしたかたも多いのではないでしょうか(いないかw)。

 

最初に言っておきますが、私はムスリムではありません。近い将来に入信する気もありません。

 

ですが、イラン研究者の端くれとして、あくまでも研究者、観察者という立場から対象地域を眺める帝国主義的な地域研究の態度ではなく、自分がその地域の住民だったらどういう困難や課題があるか、ということを可能な限り体験してみたいと思うわけです。主体と客体という非対称的な固定化された関係の中で行う地域研究から脱却する必要があります。

 

と、能書きはこれぐらいにして、今回、私は1.5日(笑)の断食に挑戦しました。

 

実は、ラマダーンに入る4月13日以前から、ムスリム生活体験と称して、豚、酒を摂らないという食餌制限を少しやってみていたのですが、これがもう。不便っつうか、楽しいっつうか、普段食べ漁っていたコンビニの食べ物やカップ麺がいかに得体の知れないものか(笑)実感しました。

 

厳密には、豚以外の肉でも、神の名を唱えて正しく屠殺・処理されたものでないといけないとか、色々と細かい規定はあるのですが、そこは一応意識はしつつ、でもまあ、だいたいで、いいじゃない(吉本隆明)ということで、とりあえず豚肉と酒を控える、ということを数日間やってみました。面倒なので家族には内緒にして。

 

以下はその心境変化の記録です。

 

2021年3月22日

ムスリム生活体験1日目。

朝。いつもの通り白ご飯と目玉焼きだったので問題なく食べた。醤油をかけたが、醤油や味噌など、製造過程でアルコールを生じるものがすべてがハラームだとは、私は思わない。酔うわけないし。

  

昼:コンビニで食べるものを選ぶのだが、これが意外と選択肢が少なくて困った。豚を避けるだけならば、レストランでは豚を使っていないメニューを選べば良いという簡単なことだが、コンビニの弁当となるとほぼ豚とかベーコンとかが入っている。豚肉が材料に入っていないはずのものにまで、豚由来の何かが入っている。

 

ちなみにクルアーンで言っているのは豚の「肉」laḥm khinzīrだ。豚と一緒の油で揚げたチキンとかは、この際やむを得ない、というか同じ油で揚げているのかどうかとか、製造工程までは分からない。しかし豚脂とか豚骨とか豚の皮はどうか。だめだろうな・・・

コンビニのきつねうどんと、最近お気に入りの鯖のおにぎりを買った。


夜:家に帰る前にあまりに腹が減ったので軽く食べたかったが、牛丼だと本格的に晩御飯になってしまうし、「博多天神」(濃厚豚骨ラーメン)はしばらくやめるとして、御茶ノ水駅付近の蕎麦屋が全滅したのはやはり辛い。軽く食べられるものがない。

 

仕方ないので「富士そば」まで歩いて、かき揚げそばを食べる。いやあ、不味かった。コロナ禍以前はこれほど酷くなかったと思うのだが、富士そば小諸そばの劣化が酷い。何をケチったらこうなるのか。それとも私がコロナで味覚がおかしくなったのか。


いつもなら買うはずの酒を買わずに家に帰った。あまり飲みたい気もしなかったし、飲んだって一時頭がおかしくなるだけじゃん、と思ったら、正気のまま夜を過ごすのもなかなか良いものである。


晩御飯はなんとカレーだった。肉は豚の薄切り肉だ。肉をできるだけ避けて、ルーとニンジンとジャガイモをメインに食べた。

 

2021年3月23日

ムスリム生活体験2日目。

朝、やたら早く眼が覚めた。酒を抜いたせいだろうか。これなら礼拝にもチャレンジできるのではないか?と思ったが、ファジュル礼拝の時刻が早すぎる。新聞配達並みだ。


朝ごはんは昨日のカレーだという。ごはんに少しだけ、ニンジンメインにとって食べた。豚肉が散り散りになっているので、どうしてもかけらが入ってしまう。そこは「やむを得ない」ということにしよう。


今日の昼は何を食べようか。念のため、買い置きしてあったレンチンのご飯を持っていくことにした。一見、豚肉が入っていないものでも、中華おこわのほうは成分表示を見ると何か豚由来のものが入っているようなので、五目御飯を持っていった。中華より和食のほうがムスリムフレンドリーだ。


昼、ファミマにアマゾンで注文した本を取りに行ったついでに、五目御飯のおかずになるものを・・・と思ったが、やはりコンビニ食品は手強い。豚肉のオンパレードだ。気温が上がってきたからか、冷やし麺類がいくつか入荷されているが、寒いので食べたくない。昨日と同じきつねうどんはあったが、かき揚げそばがない・・・


ファミマをやめて100円ローソンに行ってみる。こちらのほうがシンプルなものが多そうだ。天かすしか入っていないうどんとか・・・なんかひもじい感がすごい。


カップ麺を見ていると、面白いことに気づく。かき揚げそば「緑のたぬき」は豚由来の何かが入っているらしいが、「赤いきつね」の方は大丈夫だ。あと「どん兵衛」のきつねも大丈夫っぽい。かき揚げは豚肉が入っていないのになぜ豚由来?ラードでも使っているのか?その程度なら別にいいか、とは思うのだが、なんとなく気持ち悪くなってきたので赤いきつねを買う。物足りないのでチキンを買った。これも製造工程はわからないので危険な感じがするが・・・2日目ってことで。許して!

 

こうしてだんだんと成分表示をよく見るようになるのは良いことだ。やってるうちに、変なものを食べないようにしようという意識が働く。これまで研究者をやってきて、頭では知っているようで、自分の食べるものは気にしたことはなかったが、実際にやってみると、いろいろと難しいことがあるな、と思う。


しかし、昨日酒を抜いたからか、今日の朝は気分が良かった。思い込みかも知れないが、酒を止めることで健康が与えられたとしたら、神に感謝してしまうかもしれない。とんかつやチャーシューが食べられないムスリム食生活はただ我慢を強いられるという考えは、信仰とはズレた考えなのかもしれない。普通のラーメンなどは食べられないが、牛・羊・鳥などは食べられるので、豚がなくてもそんなに苦痛ではない。むしろ、見えないところに使われている豚を避けることのほうが大変だ。だんだんと、豚肉が汚いものに見えてくる・・・

 

夕方、腹が減ったが、何かを食べたいわけでもなく。早く帰ってランニングでもしようと、18時すぎに職場を出た。

 

駅に近づいたら何か食べたい気もしたが、選択肢はそば・うどんか牛丼しかない。さすがにそば・うどんは飽きた。

 

走るときは空腹ぐらいがちょうどいいから、何も食べず帰る。健康だ!!スーツケースを持った人たちが増えて、本格的に人の移動が始まった中央線。コロナ怖い。


晩ご飯はアジフライと麻婆茄子だった。麻婆茄子は豚挽肉が入っているので、あんの部分を避けて、ナスを一切れだけいただいた。

 

2021年3月24日

ムスリム生活体験3日目。

禁酒による清々しさの効果も薄れてきたようで、そろそろ3日坊主になろうとしている。朝は訳あって何も食べず早く家を出た。


ファミマも飽きたのでセブン・イレブンに寄ってみる。エビチリチャーハンというのを買ってみた。豚由来のものが入っていないとは限らないが。あと、朝ごはんを食べ損ねたのでフィッシュフライロールを買った。セブンのほうが食べられるものが多いかも知れない。

 

と思ったが、食べるときに見てみたら、エビチリチャーハンの調味料にもなにか豚由来のものが入っているらしい。やはりコンビニは鬼門だ。自炊ならそれほど難しくないが、豚を避けることがとても難しい。

 

そんなわけで、結局は3日坊主になってしまったのだが、その後も、豚由来のものが入っているかどうかを気にして見るようになった。

 

私がよく利用する楽天西友ネットスーパーの商品で、豚が入っていないものを探してみると、カップ麺でも日清のどん兵衛のきつねうどん、天ぷらそば、チキンラーメンは大丈夫のようだ。それと、カップヌードルでは、なぜかトムヤムクンヌードルだけがセーフ。ムスリムの多い東南アジアで売ることを意識しているのかもしれない。他方、シーフードヌードルなどは、具材には豚肉は入っていないが豚由来のものが入っているらしい。

 

日清食品 カップヌードル トムヤムクンヌードル 75gx12個

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今回、改めて気づいたのだが、レトルトのカレーでも、日本風でないインド風とかタイ風のカレーは豚が入っていないものが多い。

 

それにしても、野菜や魚を食べていればなんと安心なことか。そもそも、肉を食べるということは大変なことである。あんな大きい動物を屠っていただくのだから、一年に何回かのお祭りの時に、牛や羊を屠ってみんなで食べよう、というぐらいの頻度でよいのではないかと思う。しかし、世界中では毎日とてつもない量の肉が消費されている。放っておけばゴミになるジャンクフードにも豚肉が使われていることに、違和感を覚えるようになった。

 

 

さて、豚と酒を避ける試みは3日で終わったが、次は日中の断食である。

 

今回、仕事が忙しくて初日から断食をする余裕はなかったのだが、1週間遅れで挑戦してみた。ただし、水だけは飲んでいいという勝手なルールをつけた。個人的に、水分をとらないといろんな不具合が出るので。

 

2021年4月19日

今朝は何も食べずに家を出た。

ちょうどコーヒーを切らしていたので、今日は水だけにすることにした。出勤者も少なく、静かな日だ。

 

コーヒーを飲まないから口の中が気持ち悪くならない。何も食べないから歯もつるつるしたまんまだ。お昼休み、何も食べないでいるのはちょっと難関だったが、気を紛らわすために少し寝た。

 

普段なら、昼に早食いをするせいで血糖値が乱高下するのか、14時ごろとても眠くなるのだが、今日は何も食べないので午後も眠くなることもなく。

 

午後、お腹が「ぐ~」となった。久しぶりに胃が空っぽになったのだろうか。ラマダーンの斎戒どころか、朝食も食べていないから16時間以上何も食べていないことになる。さすがにふわふわした感じになってきた。これを30日続けたら、病気になるのではないか?

 

イフタールを見越して18時過ぎに職場を出て、御茶ノ水の「おにやんま」でうどんを食べる。普段よりしょっぱく感じた。味覚障害がリセットされたのか?

 

2021年4月20日

あまり断食を続けると脳に良くない気がしてきたので(笑)、今日は朝ごはんは(日の出の後だったが)食べた。

 

今日は日没後にすぐ食べられるよう、どん兵衛を買って行った。今日も出勤者が少なく、静かな1日だ。報告書やメール書きに集中。

 

断食をするとα波が出て良いらしい。たしかに、時間の流れが普段と違う。

 

しかし、空腹というよりは、何か水分とか栄養素がたりないのか、眼圧が高くなる感じがして、水を飲んで紛らわすのだが、さすがに今日は立って同僚と話していたら少しふらつきそうだった。朝食は食べたから、昼を抜いただけなのに。

 

何か集中できる仕事をしていないと、あと4時間、あと3時間、と時計を見ていると気が遠くなってくる。これは、飛行機に乗って長距離を移動しているときと似た感覚だ。α波も出ているのか、本当に旅をしているような気分になる。そうだ、飲まず食わずで移動する難民の気持ちになって我慢するんだ・・・

 

しかし、17時頃になって同僚が帰宅し、誰もいなくなると、あと1時間、ただ形式的に我慢するのがバカみたいに思えてしまい(そもそも信仰心がないしw)、暇になってしまったので、食べ物を買いにナチュラルローソンへ。なんか油の多いカップ麺を食べる気もしなかったし、デーツでも売ってないかな、などと自分に言い訳めいたことを思いながら。

 

ナチュローにデーツは無かった。ロカボナッツでも買うかと思いながら棚を物色していると、ジンギスカンバーガーなるものに遭遇(笑)。食べるしかない。切らしていたドリップコーヒーをカゴに入れると、もうタガが外れて、カレーパンも購入。あーあ。

 

というわけで、中途半端な断食は3日と続かなかった。しかし、神への信仰心というよりは、食べたいものも食べられない人たちのことを考えてなんとか1日は水だけで過ごすことができた。

 

面白いことに、これで胃がリセットされたのか、ドカ食いをしなくなった。以前より少ない量で満腹感を得られるようになり、ドカ食いをしたくてもできないようになってしまった。上に書いたカレーパンも結局食べずに持って帰った。

 

以前は一食でも抜いたら腹が減ってしょうがない気がしていたが、食べるということをノルマ化してしまうと、どうしても4〜5時間で作業に一区切りつけなくてはならなくなる。「寝食を忘れる」とはよく言ったもので、食べなくてもいいと思うと、もっと長いスパンで仕事ができるようになる。これは当たり前のようで、個人的には新しい体験だった。

 

 

さて、この記事を書いている現在は、食生活も以前と同じ状態に戻って、酒もグビグビ飲んでいますが、全体的に食べる量も酒量も減ったと思います。そして、食べたいものがなかったら無理して食べなくても平気だと思う様になりました。

 

イスラーム世界では、日没後にたくさん飲み食いすることで、栄養不足に陥らないようになっているのですが、個人的には、それをやったら逆に太るだけで、昼間はただ我慢するだけになってしまい、斎戒の意味があるんだろうかと思ってしまいます。形式的な断食を30日もやるより、貧しい人のことを思って、任意で敢行する断食のほうが、よろしいような気がしますよ、不信仰者の私としては・・・ 

 

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