私が本を紹介するどころか、誰かに精神科を紹介して欲しいってな感じの年度末でした。
その後、通勤読書としては、以下の本を読みました。
イスラム教再考 18億人が信仰する世界宗教の実相 (扶桑社BOOKS新書)(Kindle版)
イスラーム思想を読みとく (ちくま新書)電子版(hontoで購入)
宗教の系譜 キリスト教とイスラムにおける権力の根拠と訓練 (岩波オンデマンドブックス)
脈略もないように見えますが、シリア問題から、図書館関係を挟みつつ、現代社会における「イスラーム」の問題に関心がシフトしつつあります。いやあ、芋づる式読書っていいですね。興味が尽きない。
まだまだ机の上には本の断崖ができており、積ん読の消化には程遠いですが・・・
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さて、今日紹介するのは「あいねイラン」シリーズの2冊です。
ナフル巡行―殉教者の不滅のいのちの表象[ナフルギャルダーニー] (あいねイラン [イランの鏡(あいね)]シリーズ)
- 作者:小林歩,アリー・ボルークバーシー
- 発売日: 2021/03/01
- メディア: 単行本
「あいねイラン」と題したこのシリーズは、イランで出ている「Az Īrān che mīdānam?」シリーズの日本語訳シリーズで、シリーズ名はペルシア語のアーイーネ(鏡、鑑)から来ていると同時に、「あ、いいね」という日本語としても読めることを狙ったとのこと・・・だったかな?(うろ覚えだw)
数年前に定年退職した私の恩師が主宰する読書会があって、えらい長いこと続いているな〜と遠目から思っていたのですが、その成果といって良いでしょうか。私は読書家には参加したことがないのですが、参加者がそれぞれ自分の訳したい本の下訳を用意して、それを研究会で検討する、という形で進められたとのことで、それぞれペルシア語科卒の先輩が訳者となっています。
原書のシリーズのラインナップ全体はイラン文化研究所のウェブサイトで見ることができます。
http://iranculturalstudies.com/index.php?route=product/category&path=99
それでですね、1月に『ガーリーシューヤーン』が出て、これをブログで紹介せねば、と思っていたら、早くも3月には2巻目の『ナフル巡行』が刊行。チラシをみるとなんとノウルーズとガフヴェハーネ(コーヒーハウス)に関する3巻目、4巻目も準備中とのこと(!!)。このご時世になんたる活力!版元「包PAO」の気概にも拍手!パオって、東中野の羊肉料理屋と関係あるのかな・・・
恩師の手前、言いにくいことですが、そこはKYの徳、率直に申しますと、タイトルだけみるとニッチすぎて一般受けしないのではと、一瞬、思ってしまいましたよ。
しかし、これもまた私の率直な思いとして申しますと、最近はウェブだけではなく書店でも一般向けの、どこにでも書いてある情報のようなものばかりが氾濫しているので、イラン文化の知られざる面について知りたい人にはうってつけのラインナップになっています。ペルシア語の学生には是非読んで欲しいシリーズです。
何が良いかって、英文翻訳家が英語からササッと訳してしれっと出しちゃうような翻訳企画と違って、訳注が充実しています。近頃のガキ(院生ですらw)にありがちなことですが、単に『イスラーム辞典』とかをそのまま注に載せてしまうようなトーシローとちがって、自分が何を書いているのか分かって書いているのがわかる。こういう訳注をつける作業というのは、ペルシア語の百科事典を引いたり、関連論文を探したりと、結構な手間と労力がかかっているはずです。この訳注を読むだけでも、本文と同じぐらいの量の知識が身につきます。
さらに、原書にない写真をたくさん挿入しています。訳者後書きにも、原書の批判が書いてあったりして、ある意味原書のクオリティーを超えています。これを読んで探究心が芽生えちゃった人には、原書の参考文献もそのまま収録しているので、もっと知りたい人にはよい手引きとなるでしょう。
ところで、ナフル巡行といえば、どこかで見たことがあったな〜と思ったのですが、以下の本にも(「ナクル」と音訳されていますが)ジャハーンアーラーさんによる記述があります。
動く山 アジアの山車(この世とあの世をむすぶもの……) | 左右社
カラー写真がありますので、あわせて読んでみてはいかがでしょうか。
ずっと前に中村さんのペルシア語講座に飛び入り参加した関係で、左右社さんから頂いたですよね、この本。そのこともブログで紹介してなかったな・・・何年更新をサボってたんだろう。