来るべきアレフバー の世界

ペルシア文学の余白=世界文学の中心

アッバス・キアロスタミ監督の訃報

はてな界隈でも話題になっていますが、日本人にとってイラン映画の代名詞といってもよい人物、アッバス・キアロスタミ氏が、4日、パリの病院で亡くなりました。享年76歳でした。

 

詳しい死因について伝える記事は少ないのですが、監督は消化器系の癌を患っており、BBC Persianの記事によると、4月に合計4回の手術を受けた際、内出血から感染症(あるいは壊疽)を引き起こし、しばらく昏睡状態(?)*1になっていたとのことです。

 

その後、状態は快方に向かったとされており、4月5日付の報道では、呼吸が安定して呼吸器が外されたと報じられました *2が、先週、治療のためにパリに移り(あるいは移され)、そこで血液凝固による脳梗塞により亡くなったとのことです。

 

キアロスタミ監督は、イラン・イスラーム革命(1979年)以後、40本以上の映画を制作しましたが、映画監督としてのデビュー作は、1970年の『ナンと裏通りNan o kuche』という11分ほどの短い作品でした。

www.youtube.com

 

セリフのない作品ですので是非ごらんください。

 

『友だちのうちはどこ?』(1987年)以後の作品については、『クローズ・アップ』(1990年)、第50回カンヌ映画祭パルム・ドール受賞作『桜桃の味』(1997年)など、日本でも多くの作品が紹介されていますが、個人的にはキアロスタミ作品について語るのはとても難しいですね。どの作品にも見た目のシンプルさ以上に多くの仕掛けが施されているようで、彼の映画を観た後は、沢山の謎解きを課題として与えられたような気分になります。

 

 

f:id:iranolog:20160706023203j:plain

いつかその謎の数々を解くことができるのでしょうか・・・

 

一度だけお目にかかったとき、私がアホな学生だったのが悔やまれます。生意気な学生で失礼しました。ご冥福をお祈りします。

 

 

 

 

 

 

 

*1:ペルシア語記事ではخواب مصنوعی  と表現されているのですが、これがよく分かりません。直訳すると「人工的睡眠」ですが、普通この語は「催眠」を意味するのでよく分かりません。とにかく人工呼吸器が必要な状態。

*2:خروج «عباس کیارستمی» از خواب مصنوعی - سایت خبری تحلیلی تابناك|اخبار ایران و جهان|TABNAK

Copyright © Yasuhiro Tokuhara, All rights reserved.