来るべきアレフバー の世界

ペルシア文学の余白=世界文学の中心

『名高きアミール・アルサラーン』第3章〜第6章のあらすじ

前々回の記事で紹介した『名高きアミール・アルサラーン』のあらすじは、第1章〜第2章に相当する部分でした。

 

alefba.hatenadiary.jp

 

要するにそこまでしか読んでなかった訳ですが。

 

その後、新しい刊本だと、削除された箇所を[...]で示している場合もあれば、何も印がない箇所もあるということがわかりまして、革命前に出たマフジューブ版だと小さくて片手でなんとか読めるということもあり、通勤中にちょっとずつ読み進めることにしました。「その先が知りたい」という声にお応えすべく、ある程度進んだらあらすじを紹介します。

 

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表紙はこんな感じ。テヘラン1951or2年刊。酸性紙なのがツライ。

 

ちょっと凡例めいたことというか言い訳を書いておきます。

  • 訳語や固有名等の表記はあくまで暫定的なものです。辞書をあまり使えない状況で大まかなストーリーを掴むことを目的として読んでいますので、場合によっては大変な誤読があると思ってください。また、電車内で読んだ後、すぐに書き留められませんので、細かいところがうろ覚えになりがちです。それ、違う!というのがあったらお教えいただけると助かりますm(_ _)m
  • タイトルの「名高き」という修飾語はアミールではなくて「アミール・アルサラーン」全体にかかっていますので、「名高き王アルサラーン」というよりは「名高きアルサラーン王」のほうが正確かと思います。
  • 「アミール」は時代や地域によって色んな意味に訳せると思いますが、「王」と訳してよいかどうかについては、まだ思案中。本文中ではアルサラーンは殆どの場合「アミール・アルサラーン」の形で出てきます。「アミール」は一般名詞としても用いられていて、シャーよりは格下なので単純に「王」とすると紛らわしい。ファラングではシャーの下にアミール・フーシャングなどの地方総督がいて、王というよりは公に近い感触。さしあたりカタカナのままにしておきます。「ハージャ」も同様にカタカナとしておきます。
  • ファラング」はフランク王国に由来する語ですが、物語の時代設定は不確かで、固有名などは架空のものが多く、一概にどの時代とは言えないようです。物語が作られたガージャール朝期の生活が反映されているという指摘もあり*1、そうだとすると「ファラング」は西洋、ヨーロッパといった意味になります。

 

物語は全部で22章です。

 

第1章「ハージャ・ヌウマーンの旅と彼の得た莫大な利益」~第2章「アミール・アルサラーンの誕生」

前々回の記事をご覧ください。

第3章「ファラングの使い」

ミスル(エジプト)の総督の宮廷に招かれたハージャ・ヌウマーンとアルサラーンの前に、ファラングの使節エルマース・ハーンが現れる。アルサラーンとエルマース・ハーンは、互いの美しさと男らしさに気づき、好印象を抱く。

エルマース・ハーンは総督にファラングのペトルス・シャーからの手紙を渡す。大臣がそれを読み上げる。そこで、アルサラーンがルームの先王マリクシャーの息子であることが明らかになる。

アルサラーン親子三人の身柄を引き渡すよう要求するエルマース・ハーン。妻だけは置いていくことを提案するハージャ・ヌウマーンに、エルマース・ハーンは、ペトルス・シャーの目当ては寧ろその妻だと告げる。逆上したアルサラーンとエルマース・ハーンは互いを罵り合い、結果としてアルサラーンはエルマース・ハーンを剣で真っ二つに切り裂く。それをみていた野次馬たちの一人が外へ逃げていく。

 

第4章「ルーム征服とファラングのサーム・ハーンの殺害」

アルサラーンがエルマース・ハーンを殺した以上、ファラングが攻めてくることを避けられないと悟ったミスルの総督は、ヌウマーンの占いに従い、アルサラーンに資金と兵を与えてエジプトを離れさせ、ルームに行かせることにする。

アルサラーンがイスタンブルに到着すると、マリクシャーの血を引く王子の帰還に、17年間ファラングに支配されてきたルームの兵たちは解放への密かな期待を寄せる。戦意を燃やすアルサラーンはルームに到着して休みもとらずにルームを統治するファラングのサーム・ハーンに戦いを挑み、サーム・ハーンを殺す。アルサラーンが引き連れたエジプト兵と、アルサラーン側に寝返ったルーム兵に挟み撃ちされ、ファラング軍は壊滅。

ルームの正統な後継者として玉座につくアルサラーン。しかし、ハージャ・ヌウマーンの占いでは、それは不吉な刻だった。

10日間勝利の余韻に浸った後、アルサラーンはこの国にファラングの教会が10も建てられていることを知り、全てを破壊することを思い立つ。しかし、最後に入った大きな教会で、アルサラーンは帳に描かれた15歳ほどの乙女の肖像をひと目みて完全に心を奪われる。

司教から、それがペトルス・シャーの一人娘、ファッロフ=レカーだと聞かされると、アルサラーンは司教や司祭たちを釈放し、ファラングに帰させる。宮廷に戻ってハーレムに戻ると、アルサラーンは教会から持ち帰らせたファッロフ=レカーの肖像を眺め、侍女たちに対する興味も失い、400人の侍女全員に暇をとらせ、一人ハーレムに籠もると、肖像をみて酒に浸り、朝まで過ごした。

朝、宮廷に現れない王を案じ、ハージャ・ヌウマーンはハーレムに様子を見に行く。そこには恋に泣き疲れてやつれ果てたアルサラーンがいた。恋の相手を隠そうとするアルサラーンだが、ハージャ・ヌウマーンの説得に応じ、ファッロフ=レカーに恋をしたと打ち明ける。

悪すぎる恋の相手に、諦めるよう説得するヌウマーンだが、アルサラーンは、大軍を率いてペトルス・シャーを殺し、ファッロフ=レカーと結婚することをハージャ・ヌウマーンに提案する。しかし、ハージャ・ヌウマーンの占いは、どんな大軍をもってしても、ルーム軍は全滅し、一人として生きて帰らないという結果を示した。

 

第5章「ファラングに向かって」

ファッロフ=レカーへの恋をあきらめることのできないアルサラーンは、単身ファラングへ潜入することを思いたつ。ハージャ・ヌウマーンの反対もきかずに、3日間海で狩りをするからと伝えて船に乗ると、アルサラーンは船長に命じて無理矢理ファラングへと向かわせる。

その頃、ファラングのペトルス・シャーは、逃げ帰ったファラング人や司教から、エルマース・ハーンの死、サーム・ハーンの死とルームにおけるファラング軍の敗北、そして教会を破壊するというアルサラーンの蛮行について聞かされる。ペトルス・シャーには占いに長けた二人の大臣、シャムスとカマルがおり、両者の占いは、ルームに攻め入れば生きて帰れないという結果を示す。なお、シャムスは隠れムスリムであり、カマルは占いのほかに妖術にも長けていることを隠している。

大臣の占いにより、アルサラーンが単身でファラングに向かったことを知ったペトルス・シャーは、司教の情報を基に最新のアルサラーンの似顔絵を作らせ、街に入る10の門にこれを貼らせ、見張りをつけた。しかし、この似顔絵をみたファッロフ=レカーは、その美しさに心を奪われ、まだ見ぬアルサラーンに恋い焦がれ、後宮に入ると侍女たちに暇を取らせて一人恋に嘆き苦しむ。

同行すると申し出る部下たちをルームに帰らせ、ファラングの服装を身にまとい、一人陸に上がるアルサラーン。森の中を歩いた後、村にたどり着き、歓待を受ける。しばらく滞在することをすすめられるも、旅の目的を思い出したアルサラーンは、早々に王都ペトルスィーヤに向かう。

 

第6章「ハージャ・ターウースとハージャ・カーウース」

アルサラーンが街に着くと、城門に自分の似顔絵が貼られているのを見る。その意図に無頓着なアルサラーンは大胆にも門から街に入るとすぐ、何者かに後ろから襲われ、気がつくと暗い部屋に閉じ込められていた。

彼を捕らえた老人は、ハージャ・ターウースといい、兄のハージャ・カーウースとともに、隠れムスリムであるという。ファラングに来た目的を訊かれたアルサラーンは、王女への恋が理由であると打ち明ける。それを聞いて呆れ、王女は諦めてルームに帰っていくらでも好みの女を得るようすすめるハージャ・ターウース。

ファラングの街や人々を知ることも目的の一つだというアルサラーンに、ハージャ・ターウースは三日後にルームに帰ることを条件に、ハージャ・ターウースの息子になりすまして滞在することを認め、兄のハージャ・カーウースに街を案内させる。

ファラング人エリヤースと名乗り、劇場でコーヒーの給仕をするアルサラーンを、カマルとシャムスが代わる代わる訪れ、アルサラーンの素性を執拗に問いただすが、アルサラーンはシラを切り続ける。彼らから、藩主の一人アミール・フーシャングが王女ファッロフ=レカーに求婚するためにやってくるという話を聞き、動揺するアルサラーン。アミール・フーシャングが街に到着すると、アルサラーンは城門まで求婚者を見に行き、求婚の結果を見届けるため、宮廷に見物に行く。アミール・フーシャングは父からの手紙をペトルス・シャーに渡す。そこには、息子を王女ファッロフ=レカーと結婚させて欲しいという願い出が書かれていた。

 

(つづくかも)

 (2015/5/26修正 原語malekeを勘違いして単純に王妃と訳していましたが、王女の間違いでした)

 

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