カンヌ映画祭2015公式サイトに掲載された16日付のデイリーニュースで、アーイダー・パナーハンデ監督の『ナーヒード』(16日上映)という作品が紹介されています。
同記事より:
Ida Panahandehの登場で、イランの映画界が新しい世代の到来を歓迎します。 今回、テレビ、短篇映画、ドキュメンタリー分野で10年の経験を持つこの若い女性監督が、長編処女作となる『Nahid』を発表します。それは新しい恋愛を経験したシングルマザーが、幸せに生きるために社会の偏見に立ち向かっていく姿を描いた物語です。
ある視点部門 - 『Nahid』、Ida Panahandehインタビュー - 2015年度カンヌ国際映画祭 (国際映画祭)
ペルシア語記事で確認しましたが、この人の名前はアーイダーですね。Idaというの表記は、ヘタすると別の読み方で定着させかねない(「ダエイ」みたいにね)ので、予め強調しておきます。「アーイダー・パナーハンデ」です。新聞風の表記だったら、「アイダ・パナハンデ」かな。「ゴトブザデー」みたいに、最後を伸ばさないようにお願いします。m(_ _)m
本人がなぜIdaという表記をしているかというと、これは英語と別に「ローマ字」を学習する日本人と違って、彼らにとってはラテンアルファベット=英語であるため、英語の発音を意識したスペリングを用いることが、多々あるからです。例えばサイードをSaeed、ジャハーンベグルーをJahanbeglooという風に。そのため、日本ではジャハンベグローというカタカナ表記が定着してしまいましたが、あれは英語話者を意識したスペルです。そのへんが統一されていない、つまり日本のようにローマ字の正書法というものが共有されていないため、ソルーシュをSorooshと書く人もいれば、第二外国語がフランス語だった年配の世代だとSoroushと書く人もいます。しかしソローシュでもソロウシュでもなく、ソルーシュという音を表記するための彼らなりの工夫なのです。
話は逸れましたが、‘Nahid’: Cannes Review - The Hollywood Reporterによると、この作品は、カスピ海沿岸の寂れた町を舞台として、麻薬とギャンブルに溺れる夫と離婚し、10歳の息子アミール=レザーと暮らすシングルマザーのナーヒードを主人公に、彼女の生活の苦労とホテルオーナーで男やもめのマスウードとの恋愛を描く・・・というとつまらなそうですが、そこでイラン独特のスィーゲ(短期婚)という制度が物語の原動力となっているようです。スィーゲというのは、通常の婚姻と違って期限付きの婚姻関係を結ぶものですが(合法的売春制度に過ぎないという批判もある)、愛と自由を両立するために、女性の側からそれを選択するということでしょうか。しかしこれまたハッピーエンドとはほど遠そうな映画ですね・・・
主演は日本でも好評を博したアスガル・ファルハーディーの『別離』で家政婦役を演じたサーレ・バヤート(ナーヒード役)と、ペジュマーン・バーゼギー。
日本でも上映されることを期待します!!