(随分前に他のところに書いた記事を修正して再掲します。)
はじめに
イランの現代文学の日本語訳というのは、紀要とかに載ったのとかを集めると結構あって、これについては中東現代文学研究会で作成した邦訳リストがありまして、その内どこかで公開されるはずです、多分・・・
個人的には、近所の文化センターとかに子供を連れていって児童書を見ることが多いのですが、子供向けの民話集なんかに意外とイランの話が載っているのに小さな感動をおぼえたりします。
多いのは、もともと児童文学ではないのですが、『王書(シャーナーメ)』を児童文学として翻訳したもの。蒲生礼一訳でフェルドウスィーの『王書』抜粋が載っているものもあったりします。もちろん、イランにもシャーナーメの物語を児童文学として再話したものは多くあります。
シャーナーメについては、知人にコレクターがいますので、彼女がそのうちリストを作ってくれるだろうということに期待して、それ以外のもので見つけたものをリストアップしておきます(絵本はとりあえず除いています)。児童向けの現代文学と、民話が混ざっています。
「最後の切符」
「親方」のところで児童労働を余儀なくされている主人公の「ソーフラブ」が、給料日前日、仕事場に行くバスのチケットが残り一枚しかないため、キセル乗車をするのだが・・・
「マメ子と魔もの」
- イラン民話(内田莉莎子ほか『こども世界の民話〈上〉』p. 179-90)
主人公「マメ子」の原語が何なのか気になります。翻訳だと思いますが、「著者」と書かれていて、詳細は不明。しかし内田莉莎子さんの文章はさすがに良いですね。マメ子は元々豆で、マメのように小さいのですが、最後に魔物をありったけの力を出してかまどの中へ押し込むあたり、いくらなんでもそりゃ無理だろうと思いました。それとも魔物が小さいのか?
「九頭か十頭か」、「さすがは神さま」、「手紙」、「お月さまをたすけた男」、「どっちもどっち」、「招待」
- イラン民話(松岡享子監訳『アジアの笑いばなし (現代アジア児童文学選)』所収。)
収録されたなかでは、他の国に比べてイランのお話はどれも短め。「どっちもどっち」は狂言の「附子」と似ているお話。
「ドシュマンとドゥースト」
- ソブ・エ・モフタディー再話(松岡享子訳『アジアの昔話 1 (世界傑作童話シリーズ)』p. 89-107)

アジアの昔話〈1〉 (1975年) (世界傑作童話シリーズ)
- 作者: ユネスコ・アジア文化センター,松岡享子
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1975/03/25
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「カラスとキツネ」
- ヌールウディーン・ザリンケルク画(松岡享子訳『アジアの昔話 3 (世界傑作童話シリーズ)』p. 27-41)

アジアの昔話〈3〉 (1977年) (世界傑作童話シリーズ)
- 作者: ユネスコ・アジア文化センター,松岡享子
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1977/03/20
- メディア: 単行本
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「ちっちゃなゴキブリのべっぴんさん」
- ソブヒー・モフタディー再話、M.ニークファル画(松岡享子訳『アジアの昔話 5 (世界傑作童話シリーズ)』p. 109-31)
このシリーズは絶版になっていますが、こぐま社刊『子どもに語る アジアの昔話』に再録されているものもあったかと思いますので興味のあるかたはチェックしてみてください。
福音館の原書の方が挿絵が多いです。「ちっちゃなゴキブリの〜」は愛甲さん訳『ごきぶりねえさんどこいくの? 』と同じ話ですね。
「雨の夜のお客」、「おじいさんとおばあさん」
- フォリデーフ・ファルジャム〔作〕、アミール・アリ・バルーシィアン〔画〕「雨の夜のお客」pp. 32-43;ゾーレフ・パリローク〔作〕、アミール・バルーシィアン〔画〕「おじいさんと おばあさん」pp. 246-54.(ユネスコ・アジア文化センター編、駒田和訳『ライオンとやぎ―アジア・太平洋の楽しいお話』)

- 作者: アジア太平洋地域共同出版計画会議,ユネスコアジア文化センター,ACCU=,駒田和
- 出版社/メーカー: こぐま社
- 発売日: 2007/02
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根のない木はない

みんなでドラマランド―アジア・オーストラリア児童青少年演劇脚本集
- 作者: ACCU,ユネスコ・アジア文化センター,倉原房子
- 出版社/メーカー: 晩成書房
- 発売日: 1998/12
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日本で出る本は「世界○○全集」とか言ってもヨーロッパだけだったりすることが多いのですが、こうしてみると、ユネスコ・アジア文化センターのアジア文化の紹介に対する貢献はすごい。
今まで見た最高傑作は、『わたしの村わたしの家―アジアの農村 (1981年)』で、手元に本がないのでうろ覚えですが、アジア各国の4ページ程のお話(民話とかではなく、日常生活のエピソード的なもの)で、イランの農村の話が描かれており、搾取されている農民の父ちゃんが、仲買人はもう来なくて良い、とか言っているんですが、その台詞が面白いんですよ。細かいところは覚えていませんが、図書館で探してみて下さい。