来るべきアレフバー の世界

ペルシア文学の余白=世界文学の中心

フランクフルト国際図書展2023年の顛末

ドイツで毎年開催されているフランクフルト図書展(Frankfurt Buchmesse)での出来事について、日本では殆ど報道されなかった話題なので文字化しておきたい。 フランクフルト図書展は世界最大のブックフェアの一つとされており、世界各国のベンダーが出展す…

あなたはハマスとイスラエル、どっちを支持するのか?

平和を望む人間は、こういう二者択一を迫ることはない。こういう問いの立て方自体が罠なのである。戦争の当事者のどちらかを一方的に支持する人は、何らかの利害関係をもっているか、さもなければ単にアホなのだ。 10月7日、ハマスがイスラエルに対する非人…

古泉迦十『火蛾』が文庫化されていた!

長らく入手困難(といっても、最近は絶版本でもネットで探せば大抵見つかるんだけど。あと電子版はある)だった古泉迦十『火蛾(ひが)』が、知らん間に講談社文庫で復刊されていたのである。みると、2023年5月刊である。 火蛾 (講談社文庫) 作者:古泉 迦十 …

ダーリユーシュ・メフルジューイー監督の訃報

今朝、あるメーリングリストで知ったのですが、映画監督ダーリユーシュ・メフルジューイーが亡くなったとのことでした。しかもショッキングなことに、夫人のヴァヒーデ・モハンマディーファルと一緒に、自宅で殺されているのを発見されたのだとか。 朝の時点…

ノーベル文学賞じゃなくて平和賞だった

僕のノーベル文学賞予想は見事に外れたわけで。(純くん風) 予想が当たって大手メディアから問い合わせが来ることを見込んで待ち構えていた僕は、がっくり力が抜けて、次の日は死んでいたわけで。 やけくそになってArc Timesのライブ放送なんかを見ていたら…

今年のノーベル文学賞を独断予想

今日は20世紀イランの代表的作家の一人、アフマド・マフムードの命日です。 といっても、イラン暦‍ではメフル月12日が命日なので、閏年の場合(来年がそう)は、西暦がずれて10月3日になるときもありますが。こういうとき、イラン人だからといってイラン暦を…

鳥よ、鳥よ、鳥の物語

連休中にブログを更新しようと思ったのだが、実家にいるので本が参照できない。 というわけで、特に証拠もない与太話を。 ☆ ペルシア神秘主義文学の最高峰(の次ぐらい)の詩人、アッタールに、『鳥の言葉』という著作がある。 鳥の言葉 ペルシア神秘主義比…

雑文四本乃口上

お久しぶりね ブログを書くなんて あれから 何年 経ったでしょうか 何の替え歌か分かる人は、もう「若手」を名乗っちゃだめですよ。 さて、前回の記事を昨年5月にアップしてから、プライベートで大きな環境変動があった。その後、少しずつ文章を書く体勢を…

羽田正編『イラン史』(山川セレクション)

2000年代初めに出版された山川出版社の『世界各国史』のなかの「西アジアⅠ、Ⅱ」の2冊は、大学図書館には絶対あって欲しい基本図書だが、個人で所蔵している人はあまりいないのではないかと推測する。勿論、研究者になって研究費で本を買えるようになれば、簡…

なんちゃってムスリム食生活体験の顛末

さて、13日にラマダーンも明けて、ほっとした週末を過ごしたかたも多いのではないでしょうか(いないかw)。 最初に言っておきますが、私はムスリムではありません。近い将来に入信する気もありません。 ですが、イラン研究者の端くれとして、あくまでも研究…

シリーズ「あいねイラン」より『ガーリーシューヤーン』『ナフル巡行』が刊行

私が本を紹介するどころか、誰かに精神科を紹介して欲しいってな感じの年度末でした。 その後、通勤読書としては、以下の本を読みました。 無の国の門:引き裂かれた祖国シリアへの旅 レファレンスと図書館 ある図書館司書の日記 イスラム教再考 18億人が信仰…

アドニス『暴力とイスラーム:政治・女性・詩人』

1月初めに通勤電車の中で読んだ本。 暴力とイスラーム 政治・女性・詩人 作者:アドニス,アブドゥルアヒド フーリア 発売日: 2017/06/01 メディア: 単行本(ソフトカバー) これはいただけない。 アドニス(Adonis)と言えば、昔、大学の図書館でアラビア語の…

TeXの導入に挫折し(かかっ)てる話

「TeXも使えんとは、あほか」 と、理系の方々には思われるかも知れないが、多言語を使う人がエディタ代わりに使うにはあまり便利なものに思えなかった、という話。 血迷った経緯 もうMS Wordで原稿を書くのが狂気すぎる、そうだ、TeXを使ってみよう、と思い…

ダグラス・マレー『西洋の自死:移民・アイデンティティ・イスラム』

昨年12月に電車の中で読んだ本。 西洋の自死―移民・アイデンティティ・イスラム 作者:ダグラス・マレー 発売日: 2018/12/14 メディア: Kindle版 原書は2017年刊行。日本語版は2018年12月で、中野剛志氏による解説と、現著者によるペーパーバック版のあとがき…

ヤシーン・ハージュ・サーレハ『シリア獄中獄外』

11月に通勤電車で読んだ本です。 シリア獄中獄外 作者:ヤシーン・ハージュ・サーレハ 発売日: 2020/06/18 メディア: 単行本 今年の6月に出た本です。訳者は岡崎弘樹さん。 書誌的な情報に触れておきますと、原著は2012年にアラビア語で刊行されたもので、本…

バーナード・ルイス『中東全史:イスラーム世界の二千年』

2020年10月に出た本です。 中東全史 ――イスラーム世界の二千年 (ちくま学芸文庫) 作者:ルイス,バーナード 発売日: 2020/10/10 メディア: 文庫 まず書誌的な情報を整理しておくと、 原書は1995年に刊行されたLewis, Bernard. The Middle East: 2000 Years Of …

現地レポート系新書の価値——澤畑剛『世界を動かすイスラエル』、春日孝之『イランはこれからどうなるのか』

ということで、気を取り直しまして本の紹介を。本当は2日に1冊ぐらい本を紹介したいんですけどね。昔読んだものも含めて。 紹介が遅くなってしまいましたが、8月に通勤電車で読んだ本です。 世界を動かすイスラエル (NHK出版新書) 作者:剛, 澤畑 発売日: 20…

11月に読んだ本:番外編

いただいた本や新しく入手した本を紹介するつもりが、積読の山が高くなる一方の今日この頃です。 「自称Middle East Librarian」としては、新しく入手した本についても、逐次紹介していかなければと思っています。ネットで探せば新刊情報は出てきますが、積…

6月の通勤電車で読んだ本

献本いただいた本を紹介するはずが、あっという間に3ヶ月過ぎてしまいました。何か書こうと思うと、どうしても目下の事態について何か言いたくなってしまう。 報道番組もエセ報道番組のワイドショーも、Go to なんとかキャンペーンのドタバタで持ちきりです…

中東・イスラーム関係文献を所蔵する主要図書館のサービス状況まとめ

中東・イスラーム研究に必要な図書が利用できるかどうかが手っ取り早くわかるよう、各館の開館/閉館・サービス状況をまとめました。

Back from Overwork

随分久しぶりの更新になります。 なぜブログを更新しなくなったのか、これを語れば非常に長くなってしまうので、それは追々、ちょっとずつ(ルサンチマンを滲ませつつ?)漏らしていくこととして、とりあえず再開しますということで。 現在、御多分に漏れず…

『ヒトラーは私が殺した』(H・モアイイェリーネジャード著)

去年、ネットで見て面白そうだと思ったので、2月にイランに行ったとき買ってきたもの。 この夏に通勤電車の中で読了。 ヒトラーは私が殺した 作者:ハーディー・モアイイェリーネジャード著 出版社/メーカー:ヒーラー(ゴグヌース出版社グループ) 発売日: 20…

タラーネ・アリードゥースティーとの一日

去る6月10日(土)、アスガル・ファルハーディー監督、タラーネ・アリードゥースティー主演のイラン映画「セールスマン」(原題:Forushande)が公開されました。東京ではBunkamuraル・シネマ、新宿シネマカリテ、立川シネマシティ(17日〜)で上映。イラ…

ジャファル・パナヒ監督『人生タクシー』

久しぶりにイラン映画の話を。(若干ネタバレに注意) 現在国内で上映中の『人生タクシー』(原題:タクシー)は、ベルリン国際映画祭2015で金熊賞を受賞した、ジャファル・パナヒ(ジャアファル・パナーヒー)監督の最新作である。 jinsei-taxi.jp 2010年か…

ゲルプケ訳『アミール・アルサラーンの恋愛と冒険』

おはこんばんちわ。4月になって、朝、家族が観ているテレビ番組「ZIP!」で唯一、目の保養になっていた応援していた杉山セリナさんが殆ど出なくなってしまったので、朝から嗚咽しながら電車に乗り込む日々です。 ☆ さて、絶版になっている『名高きアミール・…

明けましておめでとうございます(イラン暦版)

サーレ・ノウ・モバーラク(新年おめでとうございます) 元日に書いた前回の記事から、あっという間に3ヶ月以上が過ぎ、イラン暦の新年(1396年)になってしまいました。相変わらずの筆不精、有言不実行の日々でお恥ずかしい限りです。 イランの新年は春分…

あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。 毎度のことながら、年末から年度末にかけては寒いのでブログ更新が途絶えがちになってしまいます。しばらく更新してなかったので、きっかけがなくなっていましたが、新年ということで、うまいこと切り替えて行きたいと思い…

走ることについて語るときに僕の騙らないこと

しばらくブログから遠ざかっている間に、ランニングを始めました。 まあ、どちらかといえばランニングというよりジョギングですが、主な動機はダイエットと健康増進なので、お金も時間もかけないで、ゆっくり走ることをモットーにやってます。で、2ヶ月続い…

「ペルシア語講座」(講師:中村菜穂さん)開催のお知らせ

ずいぶんと更新をサボってしまい、気がつけばもう10月になってしまいました。 今日は、11月から青山地下スクールで開催されるペルシア語講座のお知らせです。 11/7 (月)〜 ペルシア語講座 | 左右社 日程:2016年11月7日(月)~2017年2月13日(月)/全12回 …

テコンドー女子57kg級、二人のイラン人選手

オリンピックも残すところあと2日。私は夜中にテレビは観られないので、朝のニュースで結果を知るだけなのですが、毎日いろんな種目で日本人選手のメダル獲得のニュースがあって、端的にすごいと思います。この記事を書いている現在、日本は金メダルの獲得数…

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