来るべきアレフバーの世界

ペルシア文学こそ世界文学

中東・イスラーム関係文献を所蔵する主要図書館のサービス状況まとめ

 

献本いただいた本を紹介するはずが、あっという間に1週間過ぎてしまいました。

 

こういう状況下でも、自宅でシコシコと研究を進められる人もいれば、私のような、あらゆる言動はパフォーマティブなものだとみなす文学研究者からすると、状況(文脈)に対応した仕事をしないといけないのでは、という強迫観念を抱いてしまうのですよ・・・というわけで。

 

(4/29修正 記事本文をALEFBA.JP  https://alefba.jp/ に移動しました)

 

 

 

Back from Overwork

随分久しぶりの更新になります。

 

なぜブログを更新しなくなったのか、これを語れば非常に長くなってしまうので、それは追々、ちょっとずつ(ルサンチマンを滲ませつつ?)漏らしていくこととして、とりあえず再開しますということで。

 

現在、御多分に漏れず私も在宅勤務という状態になり、悶々とした日々を過ごしてはや10日が過ぎた。

 

もともとメールを受け取っては返し、返しては返事を待ち、というのが仕事の大半だったので、在宅になったからといって完全に暇になったというわけではない。ただ、図書を手にとって目録を採ったり、物を動かしたりする仕事がなくなり、それに付随して、口頭で打ち合わせや雑談や口説き文句をする時間が減った分、これまで帰宅後や休日に回していたウェブサイトのメンテナンスなんかを平日の勤務時間にできるようになった。また、年度末に抱えていた編集案件が片付いたことで、いくらか時間的余裕が生まれた。

 

ブログを書くことは仕事でもなければ義務でもないのだが、ブログ更新を休止していた2017年9月から今までの間にも、色んな方から著書や訳書の献本をいただいており、これらを紹介して少しでも世に知らしめることは、自称プリンス・オブ・ペルシア文学である私の義務であると、そう勘違い気味に痛感する次第である。

 

 

さて、それでは何から紹介すべきか。

 

ちょっと考えさせてください(笑)。

 

つづく(はず)

 

『ヒトラーは私が殺した』(H・モアイイェリーネジャード著)

 

 

去年、ネットで見て面白そうだと思ったので、2月にイランに行ったとき買ってきたもの。

この夏に通勤電車の中で読了。

 

I Killed Adolf Hitler

ヒトラーは私が殺した

  • 作者:ハーディー・モアイイェリーネジャード著
  • 出版社/メーカー:ヒーラー(ゴグヌース出版社グループ)
  • 発売日: 2016夏
  • メディア:
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あらすじ

「ぼく」(ハミード・ヌールチヤーン)は、マスコミにつとめる独身のアラサー男性で、あるとき、祖父(サーデグ・ヌールチヤーン)から秘密の話を打ち明けられる。それは、若き日の祖父と同僚のレザー・カームラーンプール氏が、イランのカスピ海沿岸部の町ラシュトで体験した出来事だった。

 

一般に、ヒトラーは大戦末期に自殺したということになっている一方、逃亡説も存在する。

祖父によれば、ヒトラーは自殺しておらず、ソ連軍に捕らえられ、ラシュトのレストランの地下室で密かに生き続けていた。

 

「わしが、ヒトラーを殺したんだ」

 

カームラーンプール氏とラシュトへ向かう「ぼく」。祖父がヒトラーを見たというレストランの地下室にあったのは、半世紀前の恐怖が今も続いているかのような空気と、どこからか漂ってくる、無数の死体が放つ危険な臭いであった。

 

あのとき殺されたのは、本当にヒトラーだったのか?怪しい美貌を放つカームラーン氏の娘ロザーは、ヒトラーの血を引く孫なのか?

 

謎を残しながらも、祖父から遺産を受け継いだ「ぼく」は、仕事を辞めて留学しようと決意する。その頃、祖父たちと一緒に行動したらしいドイツ在住のイラン人男性が、こんな本を出していた。

 

ヒトラーは、私が殺した』

 

「ぼく」とフランス在住の従姉妹のジャーレ、ヒトラーの孫娘かもしれないロザーは、その著者に会いに行く・・・

 

感想

112ページと短い小説である。ミステリーという触れ込みで期待して読んだのだが、緻密な謎解きや仕掛けなどはなく、ミステリーとしての楽しさは今ひとつ。

 

冒頭で、「ぼく」は実際に放映されたヒトラー逃亡説のドキュメンタリー番組に触れており、アイデア一つで書ききったという感は拭えないが、「ぼく」とジャーナリストである著者とが重なり合っており、本作の最後でもこの話を本にするようジャーレが注文していることから、もしかすると著者の祖父か誰か、本当にそんなことを言っていた人がいたのかも知れない。

 

イランは砂漠とか思っている人にはピンと来ないかも知れないが、ロシアやコーカサスとの繋がりを考えるとあり得ない話ではない、という「もしかしたら」的な関心でウケたのではないか、と思わせる1冊であった。

 

本作がデビュー作となる著者モアイイェリーネジャード氏は、最近『土地なき風たちの団体』というタイトルの詩集も出版したらしい。■

 

今週のお題「読書の秋」

 

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