来るべきアレフバー の世界

イラン×文学×図書館=

羽田正編『イラン史』(山川セレクション)

2000年代初めに出版された山川出版社の『世界各国史』のなかの「西アジアⅠ、Ⅱ」の2冊は、大学図書館には絶対あって欲しい基本図書だが、個人で所蔵している人はあまりいないのではないかと推測する。勿論、研究者になって研究費で本を買えるようになれば、簡単に買うことはできるのだが、こういう本はむしろ研究者になる前の大学生の段階で読むべきものなので、敢えて手元に置くために買う人も少ないだろう。

 

西アジア史〈2〉イラン・トルコ (新版 世界各国史)

西アジア史〈2〉イラン・トルコ (新版 世界各国史)

  • 発売日: 2002/08/01
  • メディア: 単行本
 

 

しかし、イランの通史を専門的な研究者が日本語で1冊にまとめたものは、意外と少ない。現代史については、2020年に吉村慎太郎著『イラン現代史』の改訂増補版が出たが、前近代から現代までの通史で教科書的に使えるものは、あまり思い浮かばない。


本書は、上述の『世界各国史』のなかでイランとトルコを扱った「西アジアⅡ」からイラン部分(要る部分!)だけを抜き出して山川セレクションの1冊にしたものである。通史といっても時代毎に執筆者が異なり、それぞれの時代を専門とする研究者が書いているため信頼性も高い。  

 

イラン史 (YAMAKAWA SELECTION)

イラン史 (YAMAKAWA SELECTION)

  • 発売日: 2020/12/19
  • メディア: 単行本
 

 

『世界各国史』からは既に中国史アメリカ史、イギリス史がYamakawa Selectionとして出版されているが、この後に続くフランス史(2021年3月予定)より前にイラン史が出ているというのは、単に編集の都合かも知れないが、上記のようなニーズも影響してのことではなかろうか。


再刊のメリットは大きい。まず、B6変型判のコンパクトな判型になり、通勤電車の中でも気軽に読めるのが嬉しい。

 

それだけでなく、編者曰く「最低限の改訂と補綴」(p. viii)をおこなったほか、この20年の新しい情報を補うため、現代史部分に松永泰行氏による文章を追加している(第5章p. 257-266)。学生がイランの通史を手軽に通読するのに最適な1冊になっている。


ただし、『世界各国史』では古代部分がイラン・トルコ共通の「古代オリエント世界」として執筆されていたため、本書には収録されず、もともと第2章であった「イラン世界の変容」が本書では第1章となり、9世紀頃からの歴史叙述が始まる形になっている。


『イラン史』(Yamakawa selection)の目次:(赤字は「西アジアⅡ」と見出しの文言が変わっている部分)


 『山川セレクション イラン史』への序文 (羽田 正) 
第1章 イラン世界の変容 (清水 宏祐)    1 「イラン」をどう考えるか
  2 イラン系独立王朝
  3 トルコ人の改宗とトルコ系王朝の出現  
第2章 トルコ民族の活動とモンゴル支配時代 (井谷 鋼造)  
  1 トルコ民族とイラン史
  2 イラン地域の十一~十四世紀の諸国家
第3章 ペルシア語文化圏の形成と変容 (羽田 正)
  1 十五世紀のペルシア語文化圏
  2 サファヴィー朝の時代
  3 サファヴィー朝の崩壊と十八世紀のイラン高原
第4章 近代イランの社会 (八尾師 誠)
  1 ガージャール朝の成立と国際関係
  2 列強の進出とイランの従属化
  3 抵抗の始まりと改革の試み
  4 ナショナリズムの出現と立憲革命  
第5章 国民国家への道 (八尾師 誠・松永 泰行)
  1 試練に立つイラン・ナショナリズム
  4 国民国家への途
  5 パフラヴィー体制とイラン社会
  6 イスラーム革命と現代
索引/写真引用一覧

 

『世界各国史』「西アジアⅡ」の目次:

 

序章 「イラン」「トルコ」の世界
第一章 古代オリエント世界
  1 都市の成立と発展
  2 前二千年紀の変化
  3 前二千年紀末から前一千年前半の政治情勢
  4 アカイネメス朝ペルシア帝国
  5 アカイメネス朝以後
第二章 イラン世界の変容
  1 「イラン」をどう考えるか
  2 イラン系独立王朝
  3 トルコ人の改宗とトルコ系王朝の出現
第三章 トルコ民族の活動と西アジアのモンゴル支配時代
  1 トルコ民族とイラン,アナトリア地域史
  2 イラン地域の十一~十四世紀の諸国家
  3 十一~十四世紀アナトリアのトルコ系諸国家
第四章 東方イスラーム世界の形成と変容
  1 十五世紀の東方イスラーム世界
  2 サファヴィー朝の時代
  3 サファヴィー朝の崩壊と十八世紀のイラン高原
第五章 オスマン帝国の時代
  1 オスマン支配の拡大とイスタンブル政権の形成
  2 オスマン官人支配体制の成長
  3 地方社会の自立と中央政府
第六章 オスマン帝国の改革
  1 開明専制君主の改革
  2 タンズィマートとその社会
  3 アブデュルハミト二世の専制政治
  4 「青年トルコ人」革命
第七章 近代イランの社会
  1 ガージャール朝の成立と国際関係
  2 列強の進出とイランの従属化
  3 抵抗の始まりと改革の試み
  4 ナショナリズムの出現と立憲革命
第八章 現代のトルコ,イラン
  1 トルコ革命-一党支配の時代
  2 トルコ共和国-複数政党制の時代
  3 試練に立つイラン・ナショナリズム
  4 国民国家への途
  5 パフラヴィー体制とイラン社会
  6 イスラーム革命と国民国家
第九章 近・現代のアフガニスタン
  1 ドゥッラーニー王朝の興亡
  2 革命,混乱,そして再興へ

付録
索引/年表/参考文献/王朝系図/写真引用一覧 

 

山川セレクション版には年表と参考文献がないのが残念だが(あと、個人的にはアフガニスタンの部分も欲しかったが)、さらに詳しく読み進めたい人は、図書館に行って「西アジアⅡ」の参考文献を参照すると良い。さらに、現代史については上述の『イラン現代史』、古代史については古代オリエント史に関する書物が沢山あるので、それらを手に取ると良いだろう。

 

改訂増補 イラン現代史: 従属と抵抗の100年

改訂増補 イラン現代史: 従属と抵抗の100年

 

 

なんちゃってムスリム食生活体験の顛末

さて、13日にラマダーンも明けて、ほっとした週末を過ごしたかたも多いのではないでしょうか(いないかw)。

 

最初に言っておきますが、私はムスリムではありません。近い将来に入信する気もありません。

 

ですが、イラン研究者の端くれとして、あくまでも研究者、観察者という立場から対象地域を眺める帝国主義的な地域研究の態度ではなく、自分がその地域の住民だったらどういう困難や課題があるか、ということを可能な限り体験してみたいと思うわけです。主体と客体という非対称的な固定化された関係の中で行う地域研究から脱却する必要があります。

 

と、能書きはこれぐらいにして、今回、私は1.5日(笑)の断食に挑戦しました。

 

実は、ラマダーンに入る4月13日以前から、ムスリム生活体験と称して、豚、酒を摂らないという食餌制限を少しやってみていたのですが、これがもう。不便っつうか、楽しいっつうか、普段食べ漁っていたコンビニの食べ物やカップ麺がいかに得体の知れないものか(笑)実感しました。

 

厳密には、豚以外の肉でも、神の名を唱えて正しく屠殺・処理されたものでないといけないとか、色々と細かい規定はあるのですが、そこは一応意識はしつつ、でもまあ、だいたいで、いいじゃない(吉本隆明)ということで、とりあえず豚肉と酒を控える、ということを数日間やってみました。面倒なので家族には内緒にして。

 

以下はその心境変化の記録です。

 

2021年3月22日

ムスリム生活体験1日目。

朝。いつもの通り白ご飯と目玉焼きだったので問題なく食べた。醤油をかけたが、醤油や味噌など、製造過程でアルコールを生じるものがすべてがハラームだとは、私は思わない。酔うわけないし。

  

昼:コンビニで食べるものを選ぶのだが、これが意外と選択肢が少なくて困った。豚を避けるだけならば、レストランでは豚を使っていないメニューを選べば良いという簡単なことだが、コンビニの弁当となるとほぼ豚とかベーコンとかが入っている。豚肉が材料に入っていないはずのものにまで、豚由来の何かが入っている。

 

ちなみにクルアーンで言っているのは豚の「肉」laḥm khinzīrだ。豚と一緒の油で揚げたチキンとかは、この際やむを得ない、というか同じ油で揚げているのかどうかとか、製造工程までは分からない。しかし豚脂とか豚骨とか豚の皮はどうか。だめだろうな・・・

コンビニのきつねうどんと、最近お気に入りの鯖のおにぎりを買った。


夜:家に帰る前にあまりに腹が減ったので軽く食べたかったが、牛丼だと本格的に晩御飯になってしまうし、「博多天神」(濃厚豚骨ラーメン)はしばらくやめるとして、御茶ノ水駅付近の蕎麦屋が全滅したのはやはり辛い。軽く食べられるものがない。

 

仕方ないので「富士そば」まで歩いて、かき揚げそばを食べる。いやあ、不味かった。コロナ禍以前はこれほど酷くなかったと思うのだが、富士そば小諸そばの劣化が酷い。何をケチったらこうなるのか。それとも私がコロナで味覚がおかしくなったのか。


いつもなら買うはずの酒を買わずに家に帰った。あまり飲みたい気もしなかったし、飲んだって一時頭がおかしくなるだけじゃん、と思ったら、正気のまま夜を過ごすのもなかなか良いものである。


晩御飯はなんとカレーだった。肉は豚の薄切り肉だ。肉をできるだけ避けて、ルーとニンジンとジャガイモをメインに食べた。

 

2021年3月23日

ムスリム生活体験2日目。

朝、やたら早く眼が覚めた。酒を抜いたせいだろうか。これなら礼拝にもチャレンジできるのではないか?と思ったが、ファジュル礼拝の時刻が早すぎる。新聞配達並みだ。


朝ごはんは昨日のカレーだという。ごはんに少しだけ、ニンジンメインにとって食べた。豚肉が散り散りになっているので、どうしてもかけらが入ってしまう。そこは「やむを得ない」ということにしよう。


今日の昼は何を食べようか。念のため、買い置きしてあったレンチンのご飯を持っていくことにした。一見、豚肉が入っていないものでも、中華おこわのほうは成分表示を見ると何か豚由来のものが入っているようなので、五目御飯を持っていった。中華より和食のほうがムスリムフレンドリーだ。


昼、ファミマにアマゾンで注文した本を取りに行ったついでに、五目御飯のおかずになるものを・・・と思ったが、やはりコンビニ食品は手強い。豚肉のオンパレードだ。気温が上がってきたからか、冷やし麺類がいくつか入荷されているが、寒いので食べたくない。昨日と同じきつねうどんはあったが、かき揚げそばがない・・・


ファミマをやめて100円ローソンに行ってみる。こちらのほうがシンプルなものが多そうだ。天かすしか入っていないうどんとか・・・なんかひもじい感がすごい。


カップ麺を見ていると、面白いことに気づく。かき揚げそば「緑のたぬき」は豚由来の何かが入っているらしいが、「赤いきつね」の方は大丈夫だ。あと「どん兵衛」のきつねも大丈夫っぽい。かき揚げは豚肉が入っていないのになぜ豚由来?ラードでも使っているのか?その程度なら別にいいか、とは思うのだが、なんとなく気持ち悪くなってきたので赤いきつねを買う。物足りないのでチキンを買った。これも製造工程はわからないので危険な感じがするが・・・2日目ってことで。許して!

 

こうしてだんだんと成分表示をよく見るようになるのは良いことだ。やってるうちに、変なものを食べないようにしようという意識が働く。これまで研究者をやってきて、頭では知っているようで、自分の食べるものは気にしたことはなかったが、実際にやってみると、いろいろと難しいことがあるな、と思う。


しかし、昨日酒を抜いたからか、今日の朝は気分が良かった。思い込みかも知れないが、酒を止めることで健康が与えられたとしたら、神に感謝してしまうかもしれない。とんかつやチャーシューが食べられないムスリム食生活はただ我慢を強いられるという考えは、信仰とはズレた考えなのかもしれない。普通のラーメンなどは食べられないが、牛・羊・鳥などは食べられるので、豚がなくてもそんなに苦痛ではない。むしろ、見えないところに使われている豚を避けることのほうが大変だ。だんだんと、豚肉が汚いものに見えてくる・・・

 

夕方、腹が減ったが、何かを食べたいわけでもなく。早く帰ってランニングでもしようと、18時すぎに職場を出た。

 

駅に近づいたら何か食べたい気もしたが、選択肢はそば・うどんか牛丼しかない。さすがにそば・うどんは飽きた。

 

走るときは空腹ぐらいがちょうどいいから、何も食べず帰る。健康だ!!スーツケースを持った人たちが増えて、本格的に人の移動が始まった中央線。コロナ怖い。


晩ご飯はアジフライと麻婆茄子だった。麻婆茄子は豚挽肉が入っているので、あんの部分を避けて、ナスを一切れだけいただいた。

 

2021年3月24日

ムスリム生活体験3日目。

禁酒による清々しさの効果も薄れてきたようで、そろそろ3日坊主になろうとしている。朝は訳あって何も食べず早く家を出た。


ファミマも飽きたのでセブン・イレブンに寄ってみる。エビチリチャーハンというのを買ってみた。豚由来のものが入っていないとは限らないが。あと、朝ごはんを食べ損ねたのでフィッシュフライロールを買った。セブンのほうが食べられるものが多いかも知れない。

 

と思ったが、食べるときに見てみたら、エビチリチャーハンの調味料にもなにか豚由来のものが入っているらしい。やはりコンビニは鬼門だ。自炊ならそれほど難しくないが、豚を避けることがとても難しい。

 

そんなわけで、結局は3日坊主になってしまったのだが、その後も、豚由来のものが入っているかどうかを気にして見るようになった。

 

私がよく利用する楽天西友ネットスーパーの商品で、豚が入っていないものを探してみると、カップ麺でも日清のどん兵衛のきつねうどん、天ぷらそば、チキンラーメンは大丈夫のようだ。それと、カップヌードルでは、なぜかトムヤムクンヌードルだけがセーフ。ムスリムの多い東南アジアで売ることを意識しているのかもしれない。他方、シーフードヌードルなどは、具材には豚肉は入っていないが豚由来のものが入っているらしい。

 

日清食品 カップヌードル トムヤムクンヌードル 75gx12個

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  • 発売日: 2018/04/02
  • メディア: 食品&飲料
 

 

今回、改めて気づいたのだが、レトルトのカレーでも、日本風でないインド風とかタイ風のカレーは豚が入っていないものが多い。

 

それにしても、野菜や魚を食べていればなんと安心なことか。そもそも、肉を食べるということは大変なことである。あんな大きい動物を屠っていただくのだから、一年に何回かのお祭りの時に、牛や羊を屠ってみんなで食べよう、というぐらいの頻度でよいのではないかと思う。しかし、世界中では毎日とてつもない量の肉が消費されている。放っておけばゴミになるジャンクフードにも豚肉が使われていることに、違和感を覚えるようになった。

 

 

さて、豚と酒を避ける試みは3日で終わったが、次は日中の断食である。

 

今回、仕事が忙しくて初日から断食をする余裕はなかったのだが、1週間遅れで挑戦してみた。ただし、水だけは飲んでいいという勝手なルールをつけた。個人的に、水分をとらないといろんな不具合が出るので。

 

2021年4月19日

今朝は何も食べずに家を出た。

ちょうどコーヒーを切らしていたので、今日は水だけにすることにした。出勤者も少なく、静かな日だ。

 

コーヒーを飲まないから口の中が気持ち悪くならない。何も食べないから歯もつるつるしたまんまだ。お昼休み、何も食べないでいるのはちょっと難関だったが、気を紛らわすために少し寝た。

 

普段なら、昼に早食いをするせいで血糖値が乱高下するのか、14時ごろとても眠くなるのだが、今日は何も食べないので午後も眠くなることもなく。

 

午後、お腹が「ぐ~」となった。久しぶりに胃が空っぽになったのだろうか。ラマダーンの斎戒どころか、朝食も食べていないから16時間以上何も食べていないことになる。さすがにふわふわした感じになってきた。これを30日続けたら、病気になるのではないか?

 

イフタールを見越して18時過ぎに職場を出て、御茶ノ水の「おにやんま」でうどんを食べる。普段よりしょっぱく感じた。味覚障害がリセットされたのか?

 

2021年4月20日

あまり断食を続けると脳に良くない気がしてきたので(笑)、今日は朝ごはんは(日の出の後だったが)食べた。

 

今日は日没後にすぐ食べられるよう、どん兵衛を買って行った。今日も出勤者が少なく、静かな1日だ。報告書やメール書きに集中。

 

断食をするとα波が出て良いらしい。たしかに、時間の流れが普段と違う。

 

しかし、空腹というよりは、何か水分とか栄養素がたりないのか、眼圧が高くなる感じがして、水を飲んで紛らわすのだが、さすがに今日は立って同僚と話していたら少しふらつきそうだった。朝食は食べたから、昼を抜いただけなのに。

 

何か集中できる仕事をしていないと、あと4時間、あと3時間、と時計を見ていると気が遠くなってくる。これは、飛行機に乗って長距離を移動しているときと似た感覚だ。α波も出ているのか、本当に旅をしているような気分になる。そうだ、飲まず食わずで移動する難民の気持ちになって我慢するんだ・・・

 

しかし、17時頃になって同僚が帰宅し、誰もいなくなると、あと1時間、ただ形式的に我慢するのがバカみたいに思えてしまい(そもそも信仰心がないしw)、暇になってしまったので、食べ物を買いにナチュラルローソンへ。なんか油の多いカップ麺を食べる気もしなかったし、デーツでも売ってないかな、などと自分に言い訳めいたことを思いながら。

 

ナチュローにデーツは無かった。ロカボナッツでも買うかと思いながら棚を物色していると、ジンギスカンバーガーなるものに遭遇(笑)。食べるしかない。切らしていたドリップコーヒーをカゴに入れると、もうタガが外れて、カレーパンも購入。あーあ。

 

というわけで、中途半端な断食は3日と続かなかった。しかし、神への信仰心というよりは、食べたいものも食べられない人たちのことを考えてなんとか1日は水だけで過ごすことができた。

 

面白いことに、これで胃がリセットされたのか、ドカ食いをしなくなった。以前より少ない量で満腹感を得られるようになり、ドカ食いをしたくてもできないようになってしまった。上に書いたカレーパンも結局食べずに持って帰った。

 

以前は一食でも抜いたら腹が減ってしょうがない気がしていたが、食べるということをノルマ化してしまうと、どうしても4〜5時間で作業に一区切りつけなくてはならなくなる。「寝食を忘れる」とはよく言ったもので、食べなくてもいいと思うと、もっと長いスパンで仕事ができるようになる。これは当たり前のようで、個人的には新しい体験だった。

 

 

さて、この記事を書いている現在は、食生活も以前と同じ状態に戻って、酒もグビグビ飲んでいますが、全体的に食べる量も酒量も減ったと思います。そして、食べたいものがなかったら無理して食べなくても平気だと思う様になりました。

 

イスラーム世界では、日没後にたくさん飲み食いすることで、栄養不足に陥らないようになっているのですが、個人的には、それをやったら逆に太るだけで、昼間はただ我慢するだけになってしまい、斎戒の意味があるんだろうかと思ってしまいます。形式的な断食を30日もやるより、貧しい人のことを思って、任意で敢行する断食のほうが、よろしいような気がしますよ、不信仰者の私としては・・・ 

 

シリーズ「あいねイラン」より『ガーリーシューヤーン』『ナフル巡行』が刊行

私が本を紹介するどころか、誰かに精神科を紹介して欲しいってな感じの年度末でした。

 

その後、通勤読書としては、以下の本を読みました。

無の国の門:引き裂かれた祖国シリアへの旅

レファレンスと図書館 ある図書館司書の日記

イスラム教再考 18億人が信仰する世界宗教の実相 (扶桑社BOOKS新書)Kindle版)

イスラーム思想を読みとく (ちくま新書)電子版(hontoで購入)

イラン史 (YAMAKAWA SELECTION)

宗教の系譜 キリスト教とイスラムにおける権力の根拠と訓練 (岩波オンデマンドブックス)

 

脈略もないように見えますが、シリア問題から、図書館関係を挟みつつ、現代社会における「イスラーム」の問題に関心がシフトしつつあります。いやあ、芋づる式読書っていいですね。興味が尽きない。

 

まだまだ机の上には本の断崖ができており、積ん読の消化には程遠いですが・・・

 

 

さて、今日紹介するのは「あいねイラン」シリーズの2冊です。

 

  

 

「あいねイラン」と題したこのシリーズは、イランで出ている「Az Īrān che mīdānam?」シリーズの日本語訳シリーズで、シリーズ名はペルシア語のアーイーネ(鏡、鑑)から来ていると同時に、「あ、いいね」という日本語としても読めることを狙ったとのこと・・・だったかな?(うろ覚えだw)

 

数年前に定年退職した私の恩師が主宰する読書会があって、えらい長いこと続いているな〜と遠目から思っていたのですが、その成果といって良いでしょうか。私は読書家には参加したことがないのですが、参加者がそれぞれ自分の訳したい本の下訳を用意して、それを研究会で検討する、という形で進められたとのことで、それぞれペルシア語科卒の先輩が訳者となっています。

 

原書のシリーズのラインナップ全体はイラン文化研究所のウェブサイトで見ることができます。

http://iranculturalstudies.com/index.php?route=product/category&path=99

 

それでですね、1月に『ガーリーシューヤーン』が出て、これをブログで紹介せねば、と思っていたら、早くも3月には2巻目の『ナフル巡行』が刊行。チラシをみるとなんとノウルーズとガフヴェハーネ(コーヒーハウス)に関する3巻目、4巻目も準備中とのこと(!!)。このご時世になんたる活力!版元「包PAO」の気概にも拍手!パオって、東中野の羊肉料理屋と関係あるのかな・・・

 

恩師の手前、言いにくいことですが、そこはKYの徳、率直に申しますと、タイトルだけみるとニッチすぎて一般受けしないのではと、一瞬、思ってしまいましたよ。

 

しかし、これもまた私の率直な思いとして申しますと、最近はウェブだけではなく書店でも一般向けの、どこにでも書いてある情報のようなものばかりが氾濫しているので、イラン文化の知られざる面について知りたい人にはうってつけのラインナップになっています。ペルシア語の学生には是非読んで欲しいシリーズです。

 

何が良いかって、英文翻訳家が英語からササッと訳してしれっと出しちゃうような翻訳企画と違って、訳注が充実しています。近頃のガキ(院生ですらw)にありがちなことですが、単に『イスラーム辞典』とかをそのまま注に載せてしまうようなトーシローとちがって、自分が何を書いているのか分かって書いているのがわかる。こういう訳注をつける作業というのは、ペルシア語の百科事典を引いたり、関連論文を探したりと、結構な手間と労力がかかっているはずです。この訳注を読むだけでも、本文と同じぐらいの量の知識が身につきます。

 

さらに、原書にない写真をたくさん挿入しています。訳者後書きにも、原書の批判が書いてあったりして、ある意味原書のクオリティーを超えています。これを読んで探究心が芽生えちゃった人には、原書の参考文献もそのまま収録しているので、もっと知りたい人にはよい手引きとなるでしょう。

 

ところで、ナフル巡行といえば、どこかで見たことがあったな〜と思ったのですが、以下の本にも(「ナクル」と音訳されていますが)ジャハーンアーラーさんによる記述があります。

 

 

動く山 アジアの山車(この世とあの世をむすぶもの……) | 左右社

 

カラー写真がありますので、あわせて読んでみてはいかがでしょうか。

 

ずっと前に中村さんのペルシア語講座に飛び入り参加した関係で、左右社さんから頂いたですよね、この本。そのこともブログで紹介してなかったな・・・何年更新をサボってたんだろう。

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