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来るべきアレフバーの世界

ペルシア文学・イラン文化研究と図書館の話

今日、誰かの誕生日だっけ?

イスラーム学 生存記録

今夜からキリストの生誕を祝うクリスマス(イブ)なわけですが、某カレンダーを見ていたら今日は預言者ムハンマドの生誕日となっていて、別に私はムスリムじゃないのですが、この一致に小さな感動を覚えた次第。

 

といっても、イスラーム暦は太陰暦ですので、西暦との関係では毎年11日ほどずれていきます。たまたま重なったんですね。

 

と、ここで話は終わらない。(モヤモヤしているスンナ派の皆さん、しばし我慢をw)

 

イスラームがいつ始まったか、神からムハンマドへの最初の啓示はいつ下されたか、といった素朴な疑問に答えるためには、ほとんど唯一の情報源であるイブン・イスハーク『預言者伝』と一部のハディースを参照するのがセオリーになっており、預言者の「召命日」がいつであったかについてはスンナ派シーア派では認識の違いがある、ということは、『イスラームを学ぶ』の私の担当部分である第3章でも触れました。(よかったらお読み下さい)

 

alefba.hatenadiary.jp

 

同様に、預言者の生誕日についても、スンナ派シーア派で相違があります。

 

またまたイブン・イスハークの『預言者伝』を見てみましょう。日本では岩波書店の『預言者ムハンマド伝』(後藤明ほか訳)と、『預言者の生涯』(座喜純・岡島稔訳・解説)の二つの邦訳があります。ありがたいことです。とりあえず岩波版を見てみますと、

「神の使徒は、象の年の第一ラビーウ月一二日月曜日に生まれた。」(『預言者ムハンマド伝』1巻, p.148.)

とあります。

 

しかし、イランのカレンダーを見ると、1週間後の12月29日ところにも預言者の生誕日と書かれています。今年の西暦12月29日はヒジュラ暦では第一ラビーウ月17日にあたります。シーア派では、預言者は17日の金曜に生まれたと信じられているからですね。これも召命日と同じパターンで、『預言者伝』のような情報源があっても、後からシーア派イマームハディースに基づいて情報を上書きしてしまうというケースです。

シーア派の著名な神学者シャイフ・ムフィード(西暦948頃-1022)の著作『Hadayiq al-riyad wa-zahrat al-murtad wa-nur al-mustarshid』(散佚)、同著者のMasar al-Shi'ah、シャイフ・トゥースィー(996-1067)のTahdhib al-ahkamやMisbah al-mutahajjadなどに、イマームたちの言葉に基づいて預言者の生誕日を17日とする記述があります。

この説が、更に後のシーア派の学者たちの著作、例えばサイード・ラーワンディー(1157没)のQisas al-anbiya'、イブン・ターウースのIqbal al-a'lam、シャイフ・タバルスィー(1153没)のI'lam al-wara bi-a'lam al-hudaなどによって補強されていき、今日に至ります。


で、スンナ派カレンダーで生きている人はさっきからモヤモヤしていることと思いますが(笑)、現在、ヒジュラ暦自体がスンナ派世界とシーア派世界(主にイラン)で1日ずれています。

スンナ派ヒジュラ暦カレンダー(こっちのほうが多数派)では、第一ラビーウ月12日は昨日だったんですね。今日はただの13日。で、イランのヒジュラ暦では今日が12日ですが、シーア派では17日が生誕日とされているから今日はお祝いはなし。キリスト教徒は内輪でクリスマスをやっているはずですが、イランでは基本的にクリスマスも平凡な平日です(クリスマスグッズを売る店はある)。


・・・感動して損しました(笑)。


ま、こういうことがあるので、シーア派の法学書・神学書の邦訳もあったほうがいいですね。

 

 

↓座喜純・岡島稔訳の預言者伝

  

↓後藤明・医王秀行・高田康一・高野太輔訳の預言者伝

預言者ムハンマド伝(1) (イスラーム原典叢書)

預言者ムハンマド伝(1) (イスラーム原典叢書)

  • 作者: イブン・イスハーク,イブン・ヒシャーム,後藤明,医王秀行,高田康一,高野太輔
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/11/27
  • メディア: 単行本
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