来るべきアレフバーの世界

ペルシア文学・イラン文化研究と図書館の話

『アルスラーン』ファンも必見のアメコミ『ロスタム:シャー・ナーメの物語』

テレビアニメ版『アルスラーン戦記』もとうとう27日で最終回です。

www.tbs.co.jp

原作小説をリアルタイムで読んでいた人たちは、今やおじさんおばさん。『アルスラーン戦記』?随分古い作品をマンガ化するんだな〜と思っていましたが(まだ続いてるとも知らずw、失礼)、荒川弘さんの手で再マンガ化されてここまで若い人に受けるとは思いもしませんでした。このブログも随分とアルスラーンブームに便乗させていただきました。

 

さて、かねてから私は、そんなに『アルスラーン戦記』の世界観がウケるのなら、その世界観の元になっているペルシアの国民的英雄叙事詩、『シャー・ナーメ(王書)』をマンガとかハリポタみたいなヤングアダルト向け小説にしたら、さぞウケるんじゃないか、とは考えていたのでした。例えば作画は萩原一至さん(『BASTARD!!』)とかで。

かくいう私は、小学校3〜4年生の頃、車田正美さん的なマンガ家を目指して下手なマンガを描いていました。この機会に、30年ぶりにマンガを描いて夢の印税生活に移行するか、と思っていたところ、アマゾンでこんなものを見つけてしまいました。

 

 クリックするとAmazon.comにとびます。

 

アメコミの『ロスタム:シャー・ナーメの物語』。いやあ、先を越されました!

 

私、アメコミといえば、昔『AKIRA』の逆輸入版を買ったぐらいで、本場のアメコミには全然興味なかったんですが、この表紙に惹かれまくってしまいました。

なぜかAmazon.co.jpでは見つからず、1巻、3〜4巻はAmazon.comのほうで買えたのですが、なぜか2巻だけはマーケット・プレイス出品になっていたので、ためしに2巻だけ版元の販売サイトから取り寄せました。

 

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ケータイで撮ったので写真が全体的にピンぼけで済みません。

エピソードが前後していて、現物を見ても分かりにくいのですが、左から順番に1巻、2巻、3巻、4巻となっています。文章は1巻のみブルース・バフマンBruce Bahman氏、2巻からはロバート・ナプトンRobert Napton氏が手がけており、画は全てカール・アルステッターKarl Alstaetter氏によるものです。 

 

各巻の内容は、こんな感じです。

1.ロスタムとソフラーブ Rostam and Sohrab

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イランの武将ロスタムは、トゥーラーン国との国境の近く、サメガーン(原作ではサマンガーン)の町で名馬「ラクシュ」を盗まれ、サメガーンの城にたどり着く。そこでロスタムはサメガーンの王の娘タフミーネは恋に落ち、ロスタムはイランに帰るが、そのときタフミーネがロスタムの子を授かったことを知らない。後にロスタムの子ソフラーブはトゥーラーンの勇者に成長し、ロスタムとソフラーブは、親子であることを知らずに戦い、ソフラーブが命を落とす。

2.王の帰還 Return of the King

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イラン王カイ・カーウースは辺境の属国ハーマーヴァラーンを訪れ、同国王の娘スーダーベを王妃に迎える。故国を守るために嫌々嫁いだスーダーベだが、カーウース王の人柄に愛情を覚えるようになる。しかし、ハーマーヴァラーン王は、娘を取り返すために策を仕掛ける。罠と知らずに招待を受けてハーマーヴァラーンを訪れたカーウース王は、眠っている間に捕らえられる。

これを知ったロスタムは、すぐさま救出に向かうが、ハーマーヴァラーンはバルバレスターン(ベルベル人の国)に援軍を要請し、大軍でイラン軍を迎え撃つ。

ロスタムの活躍で、ハーマーヴァラーン王は捕らえられた。しかし、イランでは王の参謀で妖術を使うアフラースィヤーブが王の不在を狙って玉座を奪おうとしていた。アフラースィヤーブの配下の猛者トゥーラジュとロスタムの一騎打ちが始まる。

・・・ロスタムって二刀流だったけ?

 

 3.悪魔たちとの戦い Battle with the Deevs

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ロスタムとソフラーブの続き。息子と知らずにソフラーブを殺してしまったロスタムは、鎧を脱ぎ捨てて隠遁生活に入る。あるとき、夢の中にソフラーブが現れたが、その姿はディーヴ(悪魔)に変わる。悪魔を倒し、再び甲冑を身につけて宮廷に戻るロスタム。イラン王カイ・カーウースと側室との間にできた王子スィヤーヴァシュの武術の稽古を任され、ロスタムとスィヤーヴァシュは稽古を通して親子のように親しくなる。裏でアフラースィヤーブと繋がる王妃スーダーベは、スィヤーヴァシュが王位を狙っているとして王をたぶらかす。

イランを攻めてきたトゥーラーンを、ロスタムと好戦的な王子スィアーヴァシュが出征して迎え撃つ。しかし、捕虜を殺せという王の命令に背いた王子は、野営地で寝ている間に連れ去られ、殺されてしまう。ロスタムが目を覚ますとイラン軍は壊滅しており、そこに現れたのは巨大な白いディーヴだった。

・・・この回、私の一押しキャラ、スィアーヴァシュ(ペルシア語風には、スィヤーヴァシュ)が軽率な感じで描かれているのが惜しまれます。ここでは出てきませんが、『アルスラーン戦記』に出てくるダリューンという天下無双の武将が乗っている黒い馬「シャブラング」っていますよね。あれ、スィヤーヴァシュの馬なんです。

それはさておき、この白いディーヴなんて、古写本のミニアチュールに出てくるのをうまくアメコミ風(?)にモディファイしていて、面白いです。

ロスタムと白いディーヴの戦いはミニアチュールの定番モチーフにもなっています。画像が見られるサイトのリンクをいくつかはっておきます。

Firdawsi - Rustam Slays the White Div (the 7th Feat) - Walters W60091A (cropped).jpg
"Firdawsi - Rustam Slays the White Div (the 7th Feat) - Walters W60091A (cropped)" by anonymous 16th-century illustrator - cropped from File:Firdawsi - Rustam Slays the White Div (the 7th Feat) - Walters W60091A - Full Page.jpg, Walters Art Museum. Licensed under Public Domain via Commons.

4.王を探して Search for the King

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 こちらはロスタムの少年時代を描くストーリー。象を退治できるまでに成長したロスタムは、ノウザル王を殺してイランの王位についたアフラースィヤーブからイランを救うため、マヌーチェフル王の血を引き、アルボルズ山中に住むという伝説の人物、カイ・クバードを探しに山に入る。カイ・クバードとともに帰還したロスタムと父ザール、カイ・クバードは、アフラースィヤーブの手からイランを取り戻す。

 

・・・装具などの時代考証や、細かい点についての検証をする余裕は今はありませんが、やっぱりシャー・ナーメだけあって面白いですね。

 

 

余談ですが、版元から購入したほうは、ステッカーが同封されていて、「やった〜!!」と喜んだのですが、肝心のマンガは頁にしわが寄って印刷の不具合がありました。

送る前にチェックしてくれればいいのに・・・と思いながらも、版元にこんな感じのメールを書きました。

(英語で)今日、届いた本は、紙にシワがあり、画が切れてしまっています。

こういう作品を出版する貴社の活動を私はとても評価しています。日本の読者にも紹介しようと思っていたので、できれば正常なものを送ってもらえないでしょうか?

不具合のページの写真を添付で送ります。

「日本の読者」って誰だよwwって言われるかも知れませんが、それはもちろんアナタです!

仕事で海外の図書を受け入れするときにもこういうことが時々あるのですが、不良品を送り返すと送料が高くつくし、それを相手に負担させる手続きも面倒なので、交換してくれとは書かずに、再度送ってくれないか打診しました。相手も売り物にならない不良品を取り返すのに無駄にお金を使いたくないはずですので、ホントに乱丁本だったよ!というのを写真で示せば、不良品を送り返せとは言わないだろう、と。勿論、送れと言われたら送るつもりでしたが。

で、そしたらすぐに担当の方から返事が来ました。重ね重ねのお詫びと、すぐに新しいのを送るという内容でした。しばらくして、新しいのを発送したというメールも来ました。私も素早い対応にお礼をしました。

送られてきた本には、またカードが入っていました。スタッフとのそんなちょっとした触れあいもあって、結果として版元のサイトで買ってよかったと思います。

 

このシリーズ、近日発売予定の5巻目は、コレクターズ・エディションということで、全巻のストーリーを収録して、各ストーリーの間に「つなぎ」のページを沢山追加しているそうです。

他にも動画とか画像が沢山ありますので興味のある方は↓ご覧ください。

www.theshahnameh.com

 

おまけ:ついでに見つけたRobert Napton氏の代表作『ウォーロード・オブ・マーズ』 。画はカルロス・ラファエル氏で、なんか男のバイブル、『コブラ』(寺沢武一先生)を彷彿とさせるなあ・・・

Dejah Thoris 1: The Colossus of Mars (Warlord of Mars)

Dejah Thoris 1: The Colossus of Mars (Warlord of Mars)

 
Warlord of Mars 2: Dejah Thoris - Pirate Queen of Mars

Warlord of Mars 2: Dejah Thoris - Pirate Queen of Mars

 

 

 

 

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