来るべきアレフバーの世界

ペルシア文学・イラン文化研究と図書館の話

「アメリカ大陸はムスリムが発見したのだ」という説

(11/17 文章を少し直しました)

abu_mustafaさんのブログで知ったのですが、エルドアン大統領の発言が話題になっているようです。

中東の窓 : 米大陸の発見者はムスリム?より:

al qods al arabi net は、トルコのエルドアン大統領が、15日ラテン・ムスリム、セミナーで、米大陸を発見したのはイスラム教徒でコロンブスではないと発言したと報じています。

それによると、トルコ大統領は、米大陸を発見したのは1178年イスラム教徒によってで、コロンブスが到着した時にはキューバにモスクがあったと彼の日記に出ていると発言したとのことです(1178年になにがあったのかは不明。因みにコロンブスの米大陸発見は、奇しくもイベリア半島イスラム教徒の最後の拠点、グラナダが陥落居た1492年)。

また大統領は、トルコはキューバでその当時モスクがあったとされる地点に、改めて記念のためにモスクを立てる用意があると発言した由。

記事によると最近イスラム歴史学者の間で、コロンブスの前にイスラム教徒が米大陸を発見したとの説をなすものがいるとのことです。但し、考古学的証拠はない由。
http://www.alquds.co.uk/?p=251071

 

日本では上記の記事しか見当たらなかったのですが、海外ではそこそこ話題になっているようです。


Erdogan says Muslims, not Columbus, discovered Americas - Yahoo News

 

アル=クドゥスの記事によれば、コロンブスキューバの海岸にモスクを見つけたという点についてはユースフ・ムルーワという人の1996年の論文が元ネタだとされています。

 

しかし1178年というのはなんなんでしょうね。

はじめに思い当たったのは、オスマン帝国時代の軍人ピーリー・レイースによる、1513年に描かれた地図(南北アメリカ大陸の東海岸の海岸線が書かれている)です。

ちょっと分かりにくいかもしれませんが、下の図で左側にアメリカ大陸の東海岸の海岸線が描かれています。アメリカ大陸を描いた史上最古の地図とされていますが、1178年には遠く及ばないのでちょっと違うようです。

Piri reis harita.jpg
"Piri reis harita". Licensed under Public domain via ウィキメディア・コモンズ.

参考:ピーリー・レイースの地図 - Wikipedia

 

また、12世紀の学者イドリースィーの著作に、リスボンから西に航海したムスリムたちが現地で囚われ、アラビア語のできる通訳の計らいで解放されたという話は有名です。自分で原文を読んだ訳ではないのですが、それが事実なら、その時点でアラビア語話者が西インド諸島にいたということになりますね。

これはあり得ない話ではないと思います。Wikipedia英語版の記事は、彼らがたどり着いたのはカナリア諸島のことだろうと、非常に現実的な見方をしていますが。

いずれにしても、それだとイドリースィーが亡くなるずっと前になるので、1178年より前ということになります。結局、1178年については分かりませんでした。

 

それはさておき、ペルシア語で何か情報はないかとネットを見ていたら、イランのハミード・シャフィーザーデ博士という人の『クリストファー・コロンブス以前のアメリカ大陸におけるイラン人とムスリムの存在の歴史』という本があるということを知りました。

エルドアン大統領の発言について、この本が元ネタではないかという説もあるようです。これがトルコ語に訳されているのかどうかは分かりませんが。

この本、残念ながらまだ日本の大学図書館等には所蔵はないようで、中身を検証することは、私にはできませんが、上記の記事によると、この本は、500以上の資料を用いて、コロンブス上陸以前にイラン文明がアメリカ大陸に存在したと主張しているとのことです。

 しかし、上記メフル・ニュースのインタビュー、それを批判的に紹介しているアルアラビーヤの記事を読む限り、決定的な証拠はなく、こじつけめいた論理が展開されているようです。彼によれば、西洋人と中国のイスラーム教徒による資料に、コロンブス以前にアメリカ大陸にイスラーム教徒が存在したとの言及があるとのこと。さらに、その「イスラーム教徒の存在」を「イラン文明の存在」に包括したうえで(すり替え?)、

  • ペルセポリスボリビアのティワナク遺跡の類似
  • イランの諸民族とネイティブアメリカンの生活様式の類似
  • コロンビアに「アーリア・クーフギール」(?ペルシア語では「アーリア・山の征服者」といった意味になるが)という先住民族がおり、イランのバフティヤーリー族に似た衣装を着ている
  • ほかにも「カーヴェシュカール」(掘削作業者)、「ヤマニー」(イエメン人)、「ソライヤー」(すばる)などの名称をもつ先住民族がアメリカ大陸に存在する(正確な名称は不明)
  • イランのネイ(葦笛)に似た笛の使用

などを、「イラン文明」がアメリカ大陸に存在した根拠として紹介しています。

南米の古代文明とペルシアの古代文明の類似については、私も考えたことがありますが、いずれにせよイスラームとは何の関係もないですね・・・(いつの話だよ)

 さらに、彼によると、

ということらしいです。

 

ネット上には、コロンブス以前の新大陸との接触についての情報が沢山ありますので、

こういうのをかき集めると、500ぐらいになるかも知れないですね。マジで。

 

しかし問題は、資料をいかに読むかだということが、よく分かりますね・・・

 

 

イスラームを学ぶ―史資料と検索法 (イスラームを知る)

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